今年の7月からIELTSを受け始め、初回でOA7.5を取り、9月に目標としていたOA8.0を取得しました。
折角の機会なので、現時点で言えることをとりとめなく書き残しておきます。
私が使用した主なテキストは以下です。
・ケンブリッジ公式問題集vol13~18
・IELTSライティング徹底攻略
・IELTSスピーキング完全対策
・文脈で覚えるIELTS英単語
・Kindle Unlimitedで無料の参考書群
・Assistant IELTS Speakingのサブスク
公式問題集をヤフオクやメルカリで安く沢山仕入れてどんどん解く。スコアを上げるためのお作法やコツは参考書を熟読して叩き込む。やはりこの王道の学習が一番効きます。
また、玉石混交の参考書群で溢れかえっているTOEICと違い、IELTSは参考書が少数精鋭で粒揃いなので、両手で足りる程度の選択肢の中から、自分と合いそうだなと感じたものをあまり迷わずに選べると思います。
では、各セクションの概要と所感、私くらいの学習者がOA8.0を取るための対策法について簡単に書きます。
スピーキング
ネイティブの面接官と15分くらいひたすらしゃべる試験です。試験官は質問と相槌を打つ程度で、殆ど時間受験者が喋ります。基本的にプロ意識の高い人当たりの良い面接官が多く、嫌な緊張感はあまりありません。集合時間に試験会場に行くとすぐに試験が始まりますので、変に気を揉んで受ける前から疲れてしまうこともありません。この辺は英検の二次試験よりも洗練されているなと感じました。
テスト内容はかなり難しいです。凡人がただ普通にしゃべるだけでは十分なスコアは出ません。試験官に「こいつ…デキる!」と印象付けるために、意図的に難しい単語や構文を織り交ぜる必要があります。また、台本を読むような発言は減点されます。そもそも台本野郎をぶっつぶす対策として、突拍子もないテーマについて質問されます。例えば「鞄」についてだとか、「アイスクリーム」についてだとか、だしぬけに聞かれます。まったく考えたこともないトピックに対しても、ともかく二の句が継げるよう訓練しておかなければなりません。また、特定のテーマに関して1分で用意し2分でスピーチする英検1級の2次試験のようなタスクもあります。ただし、英検1級と違い5つのトピックの中から1つ選ぶなどという容赦はなく、与えられた1つのトピックと真正面から戦わなくてはなりません。
対策として、参考書のモデルスピーチを音読し、ネタを少しずつ頭にストックするようにしました。参考書に収録されているトピックに関して、モデルアンサーを見る前に独り言をぶつぶつ言ってスピーチの練習をしました。その過程でテーマに紐づく用語や自分と相性の良い言い回しをインプットすることで、徐々に本番でどんな問題が来ても打ち返せる対応力を養えます。
リーディング
大学受験の現代文の問題を解くような感覚です。700~900語くらいの英文を60分で3本読みます。問題形式は、単純な四択問題やTrue/False/Not given問題をはじめ、本文中で使用された語句を選んで答えるもの、虫食いになった本文の要約文に本文で使用された語句を補って完成させるもの、パラグラフ毎のトピックセンテンスを本文のパラグラフとマッチングさせるものなど、多岐にわたります。毎回すべての出題形式が登場するわけではなく、毎回出題形式の組み合わせ若干変わりますので、本番で定石通りに動けるよう、全部のバリエーションの問題に触れておく必要があります。
難易度には幾分ばらつきがあるようで、TOEICほどの均質性はありません。たまに激ムズの文章が出ることもあり、そこに当たった日はもう不運を呪って諦めるしかありません。
ある程度まとまった量のアカデミックな英文(論文の抜粋?)を読みこなす力が必要ですが、英検1級レベルの読解問題をほぼ間違えずに解けるようであれば、IELTSのRでもスコア8.0を出せるくらいの力は備わっています。激ムズ問題対策をしたくなる気もしますが、たぶん根本的な英語力を底上げしないと激ムズ問題の完全攻略は無理です。ですので、ほかのセクションの対策を優先して、Rはその合間に公式問題を解いて形式に慣れるくらいでよいかなと思います。
リスニング
4つのパートに別れています。まとまった2人の会話を聞く問題が2セットと、ひとりの話者によるガイダンスを聞く問題が1セット、ひとりの話者の講義, プレゼン, スピーチを聞く問題が1セット出ます。
IELTSのリスニングはチャレンジングです。大抵の英語資格試験は選択問題ばかりですが、IELTSはナレーションで発話された語句を解答としてタイピング(スペルアウト)しなくてはなりません。endeavor, accelerate, necessaryなど、接尾辞の母音(~er, ~or, ~ar)の区別、lとrの正確な書き分けなど、アウトプットを前提としたボキャビルをしていないと、苦戦を強いられます。ライティングでは使いたくない語彙は避けることができますが、この試験形式ではそれができません。さらに、単複の書き分けも必要です。
ナレーション自体はクリアで、スピードもそこまで早くはありませんので、TOEICのLで495がコンスタントに出せるようであれば問題なく対応できます。しかしながら、完璧に聞き取れていないとひっかけにはまることもあります。また、正解根拠がナレーションされる順番が設問の順番と違うこともありますので、俯瞰的に聞けていないと完答は困難です。
公式問題をひたすら解いて、出題形式になれることが最大の対策になります。また、TOEICと同じように、設問文の先読みがカギを握りますので、パッと設問文を見て意味が取れるように訓練すると、解きやすさが違ってくると思います。
ライティング
他の英語資格と同様、エッセイライティングが出ます(解答時間約40分)。IELTSのライティングでは、いくつか出題の形式があります。あるトピックについて賛否とその理由だけを書けばよいもの、トピック対する2つの意見について、両者の主張の根拠を述べたうえで自分の意見を書くもの、ある主張に関して、どの程度賛成または反対するか、根拠とともに述べさせられるものなど。
また、エッセイライティングのほかに、与えられた図表について描写するというユニークなタスクがあります(解答時間約20分)ので、数字の変化や比較をする表現をインプットしなくてはなりません。
IELTSのライティングは、テンプレを織り交ぜたものが大嫌いです。スピーキングで台本が嫌われるのと同じです。Therefore, I agree with the idea for the following three reasons.だとか、This is a very serious and controversial issue we are facing today…だとか、知らんけどとりあえず書いて語数稼いどけみたいなことをやると、即減点されます。
点を稼ぐには、難しい構文(倒置、比較構文などがよい)や英語学習者があまり使わない語彙(decrease slightlyではなくdipを使ってみるなど)を駆使しなくてはなりません。
ライティングは公式問題集の問題を手を動かして解いてみるのが一番よいと思います。特に図表描写問題については、論理展開がほとんど固まっています(センテンスレベルのテンプレは許されませんが、パッセージ全体のロジックのテンプレは逆に歓迎されます)。基本的な論理構成を覚えこめば思考力や独創力は殆ど不要で、時間的な意味でも、脳のCPU的な意味でも省コストで書けるようになります。
総じて、極めてやりがいのある楽しい試験です。TOEICや英検1級に覚えのある方なら、その応用動作でかなりいい線いけると思います。
今の私にOA8.5を叩き出す力はないと思いますが、OA8.0までなら相応の努力と積み重ねをすれば、誰にでも出せるスコアではあるなというのが今のところの実感です。でも、いつかそのうちOA8.5を取ることがあったとしても、その時にまた同じことを言うだろうなと感じます。詰まるところ、語学ってのは才能や持って生まれたものによらず、個々人が夫々の出発点から日々の積み重ねを通じてネイティブレベルに迫っていく営みにすぎない、ということでしょう。
今言えることはとりあえずこんな感じです。またIELTSを受けて思うこと感じることがあれば、記事にします。
ではまた!
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